2026年6月15日の杉江松恋

今日はたくさん原稿を書くぞという意気込みなのだが、ちょっと過去を振り返ってみた
杉江松恋 2026.06.15
誰でも

2026年6月15日。

杉江松恋が今月書かなければならない原稿、やらなければならない仕事は以下の通り。

レギュラー原稿:週刊5・隔週刊1・旬刊2・月刊3

イレギュラー原稿:書評1・インタビュー1・文庫解説4・新人賞下読み1

その他:動画撮影配信5・演芸会主催1・講師1・浪曲台本1、打ち合わせ2

週末は外出の予定があったり、疲れが溜まって休養日に当てたりと書き物ができていなかったので、今日から数日は少し頑張ろうと思う。明日16日はスギエゴノミで一日アートスペース兜座、18日夜には池袋コミュニティカレッジの講義があり、19日に動画の収録があって出かける。大きな外出予定がないのが2日間だけなので、そこでは原稿の書き溜めをしなければならないのである。とりあえず今日のノルマは文庫解説2本を含む3本だ。これから息を詰めて午前中のうちに1本書き上げてしまいたい。月の前半最終日にも当たるので、ここで進捗率を50%まで上げておかなければならない。現在22.25%だから、ほぼ倍の金額だが、文庫解説は単価が高いからなんとかなるだろう。

単価が高いというのは他の雑誌原稿と比べたときの話で、本音を言えば安い。もっと正確に言うと、出版社のうち数社は正当な原稿料をくれるが、もう少し金額を上げてくれてもいいのになと思うところがほとんどなのである。解説だから、下調べをしたり、その作家の他の作品を読み込んだりしたりする。その準備を考えると、決して割のいい仕事ではないのである。もちろん良心的な金額を支払ってくれるところもあり、そうした出版社には大変感謝している。

最近では文章量の上限も、原稿用紙8枚程度と決めてくるところが多くなった。それを超えても8枚分の原稿料しか支払われない。それはそれで割り切って、8枚以上書くことも多い。解説を引き受けるくらいだから、書きたいことの多い作品なのである。

以前はそういうことはなく、上限は比較的緩かった。何枚書いてもいい、と言われたので原稿用紙50枚ぐらい書いていったらさすがに難色を示されたので42枚に縮めた、というのがハドリー・チェイス『世界をおれのポケットに』(創元推理文庫)である。担当編集者は東京創元社にいた松浦氏だった。校正刷りに赤字を入れるのがいちばんの趣味、という敏腕であった。このときはちゃんと42枚分の原稿料をいただいた記憶がある。

いちばん短かったものでは、原稿用紙6枚というものもあった。ページの都合でどうしてもそれ以上は入らないというのである。厳しい〆切では依頼を受けてから入稿まで1週間というのも何度かあった。一つは作品の映像化が決まって急に出さなければならなくなったものなのだが、理由がわからないままで編集者に懇願されて書いた文庫もある。あれはたぶん誰かが原稿を落としたのではないかと思う。そういえば、依頼があって返事をし、しばらく経っても催促も何もないのでおかしいと思っていたら、その作品の文庫が出ていたということもあった。ちゃんと解説付きである。急いで編集者に連絡し、あちらのミスで私からの応諾メールを見落としていた、ということが判明した。あれはどうしたのだろうか。文庫解説を書くに当たって下調べはしたはずだが、それに相当する対価は貰わなかったような気がする。その後いろいろあって、その出版社とは縁遠くなった。あれは前触れのような出来事だったのである。

そんな風に文庫解説についてはいろいろなことがあった。書き終えてしまえばその仕事のことはするりと頭から抜けてしまう性分なのだが、苦労したことはなんとなく覚えているものだ。

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