2026年6月3日の杉江松恋

新人賞下読みをするときは、いつもよいしょっと自分に気合を入れる
杉江松恋 2026.06.03
誰でも

2026年6月3日。

 杉江松恋が今月書かなければならない原稿、やらなければならない仕事は以下の通り。

レギュラー原稿:週刊10・隔週刊1・旬刊3・月刊4

イレギュラー原稿:インタビュー1・文庫解説4・推薦文1・新人賞下読み1・企画書3

その他:動画撮影配信8・演芸会主催1・講師4

 一日かけて、直近に迫った某新人賞の下読み一次を終わらせた。ついでに選評も書いてしまい、送ることにする。明日が台風らしいので、明後日到着としたのだが大丈夫だっただろうか。選考料は入ると大きいのだが、実は珍しく先払いの賞なのですでに頂戴してしまっている。というわけで進捗率は昨日と変わらず2.60%である。

 新人賞の下読みは収入源としては大きいのだが、疲れる仕事でもある。他人の文章を読むというのは、生理の異なるものを体内に入れるという作業なので、拒絶反応が起きて当然だ。プロの書き手の文章だって、原理は同じである。いかに拒絶されずにそれを摂取するか、ということが大事で、書くことも難しいが、読むのも同じくらい大変だ。見た瞬間、体内に抗体反応が出てしまいそうになる文章というものはある。でも自分以外の読み手には、それは気持ちのいい文章かもしれないので、自らの好悪だけで判断してはいけないわけだ。というわけで、我慢しながら読む。あるいは自分を騙しながら読む。

 こういう書き方をしては失礼かもしれないが、新人賞の応募原稿を読んだ後でプロの書き手の文章に触れると、ああ、気持ちいいなあと思う。プロだから当然なのだが、生理的嫌悪感を起こさせずに自分の文章を読ませるこつは書き手によって違っているはずで、そういうノウハウだけを集めたアンソロジーがあったら読んでみたいと思う。私とは正反対のやり方をしている方がいたらぜひ知りたいものである。ただ、これこそ間違いなく商売上の秘密だろうから、おいそれとは明かしてくれないとは思う。

 このニュースレターでは手がけた仕事についても随時お知らせしていく予定だが、解説を担当した文庫などを紹介するつもりが、別の本が届いたので今日は書いておくことにする。

 PHP文芸文庫から、『いのち、見つめて 医療小説傑作選』が6月10日発売で刊行される。ご存じの方はあまりいらっしゃらないかもしれないが、私は『小説新潮』で三ヶ月に一度、医療小説の書評を担当している。日本医師会がスポンサーとなった日本医療小説大賞という文学賞があり、その下読みをしていたことから始まった連載だ。なんで医療関係者でもない私がそういう仕事をするようになったかはよく覚えていない。しかし仕事というのは声をかけられたらやるもので、日本医療小説大賞は終了してしまったが、『小説新潮』の書評欄は残ったし、こうしてアンソロジーの編者を務めないか、という依頼も入ってくるわけである。

せっかくなので収録作を書いておく。夏川草介「ダリア・ダイアリー」、渡辺淳一「十五歳の失踪」、帚木蓬生「藤籠」、吉村昭「さよと僕たち」、唯川恵「最期の伝言」、瀬名秀明/原作・手塚治虫「三人目の幸福」の六作である。最後の一篇は『少年チャンピオン』50周年を記念して瀬名が執筆した短篇集『小説ブラックジャック』から採った。医療小説の草分けから現代におけるホープ、二次創作までバラエティに富んだ内容になったと自負している。おもしろいはずなので、書店で見かけたら手に取っていただければ幸いである。

本日は台風らしいので、一日在宅の予定だ。できれば原稿を3本くらい書きたい。

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